新しい生活に慣れてきて、少し気が抜ける5月頃。
何となく気が滅入って勉強や仕事に身が入らない、集中できないという症状の精神的な病気、5月病にかかってしまい気分は憂鬱だ。
何か変わった事が起きないかな〜、と思っていた俺は代わり映えの無い日常に刺激を求めていた。
しかし、この思いは直ぐに訂正される。
日常が恋しくなるほどの事件が俺の周りで起こってしまったからだ。
俺の意思とは関係なく、それは突然起こった。
―心の闇に光を照らして−
鳥達がチュンチュンと鳴き、朝日が窓から射してくる時間に俺は毎朝起きる。両親がいない俺は家事をしなくてはいけないからだ。
一人身ならギリギリまで暖かい布団で幸せ気分に浸っていられるのだろうが、生憎俺には手のかかる義妹がいるのでそれは不可能となっていた。
寝間着から着替えた俺はTVをつけてから朝ごはんを作り始める。
ブラウン管の画面からはニュースや天気予報をアナウンサーが喋っているのだが、台所にいる俺には音しか聞こえなかったりする。
朝ごはんを作り終えると義妹を起こしに行く。
「お〜い、起きろ〜」
やる気の無い俺の声が義妹の部屋に響く。義妹の体を手でユサユサと揺らす。
「……」
「おはよう、朝ごはん出来たから早くリビング来い」
義妹の桜は起きるとボーっと俺の方を見て頷く。リビングに桜が来ると俺達は朝ごはんを食べ始める。
ちなみに今日の献立はご飯にわかめの味噌汁、出し巻き卵に焼き鮭という日本人の心を忘れない俺のポリシーに則ったメニューだ。
「今日は病院か?」
「……」
会話を聞いている人からすれば続いてないように思われるが、桜は別に無視している訳ではない、喋れないのだ。
桜は昔、義母に苛められ、その代償に失語症になってしまったのだ。義母は死んだので苛めは無くなったが、桜の心の傷は深く今も喋れない状態だ。
今は手話で会話しているので楽になったが、昔は手話さえ出来なかったのでコミュニケーションをとるのが大変だった。
「ご馳走様」
「……」
「カウンセリング頑張れよ、早く桜の声が聞きたいからな」
俺は桜の頭をそっと撫でる。
「(//////)」
桜は顔を赤くして俯いている、人に優しくされるという事をあまり知らないから、恥ずかしいかもしれない。
「俺、今日泊まりだから留守よろしくな」
「………」
桜は俺の顔をジッと見つめながら目で何かを訴えている。
一人は嫌、と桜の瞳は涙目になりながらの訴えに、俺は友達の家に泊まりに行くのを諦める。
「……分かったからそんなに悲しい顔をするな。泊まるのは止めるよ。
ちょっと遅くなるかもしれないけど今日中には帰ってくるよ」
「……」
「本当だよ」
俺の言葉に桜は喜んだのか腕に抱きついてくる。
「もう学校行かなきゃ行けないから腕から離れろ、ほら」
桜は渋々といった感じで離れる。まったくコロコロ表情を変える義妹だ、本当。
これで喋ることが出来ればモテモテだろうな、兄としては不思議な感じだ。
「じゃあ学校行ってくるから、桜も病院遅れずに行けよ」
俺は桜にそういって学校に行く。
俺の通っている学校は、家から徒歩20分という遠いのか近いのか判らない場所にある。
自転車を使えば直ぐなのだが、生憎俺の学校では自転車登校が禁止されている。
「お早う」
教室に入ると数人の生徒が勉強しているのが見える。今年、中学三年である俺は受験生。
5月といっても受験に向けて勉強する人は珍しいことではない。
しかし、勉強の出来ない俺にとってその姿は尊敬に値する。俺だったら10分でギブアップなのに……凄すぎる。
「お早う、優吾」
「あぁ、お早う茜」
「相変わらず眠そうね、また徹夜でゲーム?」
「いや、勉強しようと思ったんだけど急に電波が脳裏を過ぎってね。ゲームをしないと死んでしまう感じがして…」
「そんなわけ無いでしょ!! まったく気をつけなさいよ?」
俺の女友達である「鷺咲 茜」がいつものように話しかけてくる。
心配してくれているのが分かっているから、俺は素直に茜の忠告を聞く。一応聞くだけだ。
そんなのでゲームが止められたらどんなに楽だろう……止められないんだよな〜受験生なのに……
「ねえ本当に分かってる!?」
「え? ああ悪い、ちょっと考え事してた」
次の瞬間、視界が一瞬真っ暗になる。
やべえ、相変わらず茜のパンチは破壊力抜群だな……それにしても、すぐ手が出るなんてどっかの暴力王女様だな、ホント……
「痛い」
「当たり前でしょ? 思いっきり殴ったのだから」
「まったく、ま、そんな所も可愛いのだけど…」
「(//////)な、何言っているのよ!?」
「事実を言ったまでだ、茜はかなりいい線だと思うぞ? 俺は」
俺の言葉に茜は顔を赤くしてあたふたしている。そういう所を言っているんだけどな〜。
そんな俺と茜のコミュニケーションをしていたら担任の先生が教室に入ってくる。俺と茜は急いで自分の席に着く。
授業が始まると一気に眠気が襲ってくる。全然分からない英語の授業なので余計に拍車をかける。もういいや、寝よ………夢の世界にレッツゴー♪
起きた時には昼休みだった。ヤバイ…四時間も寝ていたのか…誰か起こせよ!!
「優吾、昼ご飯食べよ」
「ん? ああ、じゃあ食べるか♪」
やっぱ学校で唯一の楽しみは昼ごはんだ。いつものように茜と一緒に食べると俺はまた眠りに入る。
放課後、友達の家に泊まりに行く約束を取り止めた俺はまっすぐ家に帰る。
夜、かき氷を買いに行くため、コンビニに出かける。
徒歩で五分もかかる所にあるコンビニは、薄暗い小道を歩かなくてはならない。
ホラーなどが苦手な人にとっては、絶対に通りたくないような雰囲気を醸し出している道を俺は通っていく。
生憎、ホラーは大好き人間な俺にとっては関係なかったはずだ。
しかし、今日は違った。
人間とは違う”何か”が対峙していて、微かに血の臭いが俺の鼻を刺激する。
非現実的な光景を見せ付けられた俺は動くことが出来なかった。
そして片方の”何か”が俺のほうに向かって走り出す。
死のイメージが俺の脳裏に浮かび上がり、様々な思い出が頭の中を駆け巡る。
”何か”の腕が俺に向かって振り下ろされた時、死を覚悟した。しかし俺の思惑とは違った。
目を開いた時に見た光景は、姿は多少変わっているが良く知っている人物が立っていた。
「な!? あ、茜!?」
「……見たのね、私の本当の姿……」
「本当の姿って……まるで「そうね、正確に言うと人間じゃ無いわ」!!!」
「じゃあ……」
俺はある考えが頭によぎった。
「半分が『人』で半分が『獣』の半人半獣という存在、軽蔑した? 怖くなった? 優吾」
茜は自分を卑下するような感じで言い放つ。
誰かに支えてもらいたいのに、誰かに助けを求めたいのにそれが出来ない。
『人』と違うだけで差別され、誰も茜の心を見なかったのだろう。
過去に受けた心の傷は『人間不信』という形で茜を苦しめている。
そんな茜の姿を見て、俺は茜に恐怖しなくなり、心の闇から茜を助けたい!!! と強く思った。
「そんなわけ無いだろ!!」
「………同情なんか、してほしくない」
「同情なんかじゃない!!」
俺は更に言葉を続ける。
「例え人間じゃなくても茜は茜だ! 俺にはそんな事関係無い!!」
「上辺だけよ、そんなの……」
「そんな事無い!! 他の人間は分からないが少なくとも俺は違う!!!」
俺の言葉に茜はビクッと体を震わして、恐る恐ると言葉を紡ぐ。
「……本当? 本当に違う?」
「ああ、そんなので茜を特別視しない」
「……うぅ……」
小さな体で一生懸命抱きついて、俺の胸に顔を埋める。
あまりに近すぎるその身体は小刻みに震えていて、茜の瞳には涙を浮かべている。
「泣くの、我慢しないほうが良いよ」
彼女の瞳からは大粒の涙がこぼれ落ちた。
今まで押しとどめていた感情が一気に噴き出したように……
それを拭うこともせず、その顔を涙でいっぱいにして愁を見つめる。
大量の返り血を浴びているにも拘らず、月光に当たっている茜の姿はとても儚く、綺麗に見える。
「ありがとう、優吾」
茜の言葉に俺の心臓の鼓動が大きく波打つ。
心臓が五月蠅く聞こえるほど静かな時が過ぎる。俺の中では10分にも1時間にも感じられた時間にも感じられた。
「どうしたの?」
「いや、何でもないよ」
心の内を悟られないように俺は空を見上げる。
空気が汚れているのか、街のネオンが明るすぎるのかは分からないが星は見えなく、そこには満月が闇の中で明るく光っている。
茜の心の中で俺はあの満月の光のように、心の闇を照らすような存在になりたいと俺は思った。
「何か俺も手伝えることあったら言えよ」
「うん、でもそれは大丈夫。もう優吾も巻き込まれているから」
「は???」
俺は思わず間抜けな声を出してしまった。
「だって敵に優吾の顔見られたでしょ? そのせいで私の仲間だと思われているよ」
「じゃあこれから俺も狙われるのか!?」
この後続く言葉が自分にとって嫌じゃない方じゃない事を祈る。
「多分狙われる♪」
俺の祈りは通じなかった。
「嬉しそうに言うな、それに親指立てて言う言葉じゃないだろ!!」
「まあまあ、ほら飴あげるから許して♪」
「やった〜飴だ〜〜! ってこんなんで許せるか〜〜!!!!」
この後、桜とゲームする約束を思い出した俺はダッシュで家に帰る。
しかし、そこに待ち受けていたのは、頬を膨らませて怒っている桜がいた。
桜の機嫌を取り戻すのに2時間はかかり、条件として出された桜と一緒に寝ることになる。
シリアスだった俺は何処行ったんだ? と思いつつも、桜と間違いを起こさないように精神をすり減らしながら、俺は深い眠りについた。
この日を境に、俺にとっての日常は無くなった。
茜の敵が俺の命を頻繁に狙いに来るわけもなく、普通の日々が続くと思っていたのに一人の人物によって、それは壊された。
「ほら!! 朝だよ、優吾」
「………」
「?? 何でそんなにテンション低いの?」
「何でお前がここにいるんだよ!?」
そこにはいるはずがない茜が、卵色のエプロンをかけて立っていた。
「優吾の警護、今日からここに泊まり込みって言うか、住む!!」
「はぁ!? 何寝惚けた事、そ「義理とはいえ、妹と一緒に寝た事を学校に言えばどうなるかな〜♪」!□%★○?なななな、何でお前がそれを!!!」
「優吾の布団に桜ちゃんの匂いついてたし〜♪、という訳でここに住むからよろしく〜♪」
半ば呆然としている俺を無視し、茜は部屋から出て行った。
「……俺の………俺の日常返せ〜〜〜〜!!!!」
俺の言葉に誰の返答も無く、部屋に虚しく木霊した。
☆★☆登場人物☆★☆
「自分の事話すのって苦手だけど、まあこんな感じだ」
霧島 優吾(きりしま ゆうご)15歳
この物語の主人公、日本をこよなく愛す中学三年生。
性格は大雑把で明るく気さくだが、人の心を重んじる優しい少年。恋愛に関しては鈍感で桜や茜の気持ちをまったく分かっていない。少々シスコン気味(笑)
「俺は庶民派だ!!」と公言するほど庶民の生活が好きで、将来の夢も「幸せな家族生活」を目指している(もちろんこの家族の中には桜も含む)
好物は日本食で、嫌いなモノはハンバーガー。趣味はゲームで特技は料理。
喧嘩は嫌いだが、大事な人を守るためなら手段は厭わない冷徹な面もある。
一人称は『俺』
桜とは義理の兄妹の関係、茜は友達以上恋人未満の関係と思っている。
「…………(喋れない)」
霧島 桜(きりしま さくら)14歳
優吾の義理の妹、ヒロインの一人。
昔、義母に苛められ、その代償に失語症になってしまい、現在は喋ることが出来ない。
学校は休学中でカウンセリングに通っている。
優吾とは手話で会話するが、優吾の直感で大抵な事は手話をしなくても意思疎通が出来る(優吾限定)
引っ込み思案な性格に見られがちなのだが、実は積極派。優吾のベッドに入ることもしばしば・・・(笑)嫌いなものは沢山あるが、好きなものは優吾(笑)
艶やかな黒のロングストレートヘア 運動する時は縛ってポニーにしている。
「私の事? ん〜、スリーサイズと体重以外なら良いわよ♪」
鷺咲 茜(さぎさき あかね)15歳
優吾の通っている同級生、この物語のヒロインの一人。
正体は、半分が『人』で半分が『獣』という半人半獣という存在である。
いつもは人間形態でいるが、敵と戦う場合は半人半獣の形態、新月の時は獣化形態でいる。
因みに獣の種類は『狐』
性格は明るく元気だが、心の内を表に出せない部分もあり、優吾に似ている所がある。
両親はいなく、兄弟は姉が一人いるが、現在新たな恋を求めて旅行中のため一人暮らし。
セミロングで少し茶色が入っている髪の毛は、活発的な彼女に似合っている。
優吾の事は『心許せる大切な人』と思っていて、恋愛感情もあり。
―――――――後書き―――――――
オリジナル小説は二作目のシュウジです(一作目は手抜き作で、とても見せられるものではありません(苦笑))
キーワード小説は初めての『−心の闇に光を照らして−』は如何だったでしょうか??
自分的には全然だめって感じです(汗) 大丈夫かな?
何か無理矢理繋げてしまい、意味不明な所が多い文章になっていますし(激汗)
因みにキーワードは『半人半獣』『憂鬱』『卵』『氷』『画面』『留守』『月光』『王女』
『失語症』『飴』の10個が入っています。
いや〜二次小説とは違い、ある程度路線が決まっている訳でもないので大変でした。
登場人物を何人にするか、どんなキャラクターにするか、どんな物語にするか、悩みに悩み、結局現代物のファンタジー風味という感じに。
特に大変だったのはWordで5枚という点だったんですが…(笑)
感想、または文章の指摘などドシドシ送ってください!!! (あまりキツイお言葉を送ると凹みます)これからもより良い文章を書いていきたいんでよろしくお願いします。
ではでは(^^)/