何時までも貴方の隣に……





窓から一筋の光がアタシの首筋を照らしている
いつもならこんな時間に起きる事なんて無いはずなのに、どんどん眠気が覚めていく
アタシは枕元に置いてある目覚まし時計を解除して、上半身だけを起き上がらせる
只今の時間は6時30分


「んっ……んん〜〜……」


アタシは背伸びをして、自分の部屋を意味も無く見渡す
3ヶ月前までは無かった写真立て、机の上に置いてある朋也から貰ったペンダント
それを見ていると幸せ気分に浸れ、顔も緩んでしまう

10分ぐらいしてアタシはハッとする
折角早く起きたんだから、とベットから降りて朝のシャワーに向かう
パジャマと下着を洗濯かごに入れ、早々とバスルームに入る












キュッキュッ


シャワーの蛇口を捻ると、冷たい水が出てくるので少し待つ
これが原因で風になったら馬鹿だし……
しばらくすると暖かいお湯が出てくるようになったので、シャワーを浴びる


「少しは長くなったわよね?」


別に誰に言っているわけではないが、思わず言ってしまうのはやっぱり朋也関連だからなのだろうか
3ヶ月前、朋也に自分の気持ちを伝えるために切った髪の毛
セミロングぐらいにはなったのかな?
そんな事を思いながらシャワーを止める












「ふぅ、さっぱりした」


シャワーを浴びて心身ともにすっきりとしたアタシは、手早く長い髪にドライヤーを当てる
短かった頃は乾かすのも楽だったのに、そう思えずにはいられないのはアタシの贅沢というものだろう
これも朋也のため、と考えると苦に感じなくなるからよしとしよう
―――何か自分で言ってて恥ずかしい
髪を乾かし終えて、前髪をチェックして軽くメイク


「……よし」


着替えを済ませ、朋也にもらった紫色のアメジストのペンダントを身につけ、鏡の前で再確認をした
そして次の目的地、台所に向かう











つい三ヶ月前ならわからなかった自分の性格の一つ
それは、意外にもアタシは尽くす系らしい
一生懸命作ったお弁当を朋也は美味しいと言ってくれた
言われた時のアタシは、もう恥ずかしさと嬉しさが混同した気持ちが心の中で絡み合った
思わず朋也に抱きついて、キスを何度もしたのを覚えている
彼女じゃなかった頃も食べてもらった事があったが、そんな時の嬉しさなんて軽く凌駕していた
やばい ……思い出して顔が赤くなってきた(/////)
今のアタシを第三者から見れば、確実に彼氏にお弁当作ってるとわかるぐらい顔が緩み、耳まで赤く染まっている状態だ
こんな所を誰かに見られたら……


「また朋也君にお弁当?」

「ひゃ!? お、おおおお母さん!! 脅かさないでよ!!!」

「普通に声かけただけよ、お早う杏」

「………お早う、お母さん」

「まったく朝から惚気ちゃって、避妊はちゃんとしなさいよ」

「お母さん!!!!!」(///////)

「あ、でも出来ちゃったら朋也君と結婚すればいいんだもんね♪

 ほら杏、これで結婚出来る口実が出来るわよ」


駄目だ、この人には勝てない………
流石アタシの母というか、それとも恋沙汰大好きなだけなのか、恐らく両方だろう
アタシのお母さんは学生結婚もOKする、というか今すぐ孫の顔が見たいとまで言う何処か間違っている人物だ
決して年とっているわけでもない、アタシから見てもまだ20代という美貌を保っている
というか、150も無いアタシのお母さんはどう見ても40代には見えない
因みに性格は、アタシの性格をベースに椋の意外な大胆さが+α×2している感じ
正確に言うとアタシ達がお母さんの血を引いているわけだが……


「で、実際何処までいったの杏?

 C? D? E?」


A、Bをすっ飛ばして聞くこの恋沙汰好きをどうにかして欲しい
もっと贅沢言えば、性格をどうにかして欲しいと切に願う
というか、Eまであったっけ?


「ねぇ杏〜♪

 教えてよ〜〜教えてよ〜〜♪」


頼むから調理中に擦り寄らないで……
それと、甘い声も出来るだけ我慢してくれると凄く嬉しい
まるで自分を見ているようで、恥ずかしくてしょうがない
しかし、その姿が似合っているのもまた事実


「流石はアタシのお母さん……」

「ん? 何か言った、杏」

「ううん、何でもないわ。気にしないで」

「う〜〜、何か隠してる感じがするけどまあ良いわ」


通常ならここで離れていくはず、というか決定事項に近いパターンなはずなのに、お母さんは一向に離れようとはしない
寧ろ、より一層抱きついてくる
すりすりと頬を擦り付け、目を閉じてクンクンと首筋とかの匂いを嗅いでくる
アタシは無視を決め込み、出汁出し巻き卵の準備に取り掛かった











「行ってきまーす」


学校まで十分な時間があるから、アタシは朋也の家まで迎えに行くとしよう
先ほど自分で作った弁当を二つ、鞄とは別に大事に持つ
しかし、外はもうすっかり夏の季節になり、朝でも強烈な暑さを誇っている
歩いていくのも嫌になりそうな猛暑が続く日々は、アタシの足をバイクへと誘う


「ふぅ……気持ち良い」


バイクを走らせると、風が当たるので気持ちが良い
髪の毛で暑かった首筋も、この風のおかげで涼しくなった
朋也、起きてるかな?
起きてる筈が無いのだが、起きていたら朋也の寝顔が見れないそう思うとやはり寝ていて欲しいと思ってしまう

朋也の家の前にバイクを止める
アタシは何時ものように合い鍵で鍵を開ける
何度も同じ事をしている行為なのに、何故か心臓が高まるのだ
とりあえず一端落ち着いて、動機を押さえる
合鍵を渡されてから一ヶ月、自分で鍵を開けて入った回数は10回以上
はっきり言って入りすぎだ、と思わず自分に日本語目茶苦茶な突っ込みを入れたい

朋也を起こさないように廊下を静かに歩く
朋也の部屋のドアをゆっくり開けていく
そして、開けた隙間から寝ている朋也を確認する
アタシの顔は緩みまくっている事だろうが、今は見る人なんていないので、この際気にしない
ベットの上で無防備に寝ている朋也
その寝顔は、愛くるしくて、幸せな気分にさせて、アタシの心をドキドキさせる


「……朋也……」


朋也にしか聞かせたことの無い、甘い声を出す
ベットにそっと腰掛けて、朋也の唇を指先でなぞる


「……朋也……」


あぁ同じだ、お母さんと同じでアタシも尽くす系だ
意地張らないで甘えても、それを全部受け止めてくれる朋也
これも惚れた弱みか、とアタシは勝手に完結させる


「……大好き……愛してる」


アタシは朋也の耳元で囁くように言うと、朋也の唇にキスをする
学校まで時間がある
アタシは朋也の隣に寝込んで抱きつく
朋也に起きる気配は無い

意地なんて張らない
朋也のためなら何でもする
朋也の彼女に、朋也の隣をずっと歩いていける人になりたい
我が侭も言わない
だから……



―――――アタシの側にいてね、朋也